劇評

劇団Lobo代表渡邉ヨシヒロ 
  
 初めまして。
札幌でLoboという劇団の代表を務めています渡邉ヨシヒロと申します。
普段は演劇を生業にしておりますが、とあるご縁から2019年と 2020年の冬の祭典に人形操者として
出演させて頂き、ここ数年はタイミングが合わず参加することができておりませんが、以来、家族全員
で毎年『冬の祭典』を楽しく観劇させて頂いております。
  今年も拝見させて頂きましたが、生の楽器から奏でられる曲に合わせ、目まぐるしく変わる大掛か
りな装置を所狭しと躍動する人形たちに心踊らされ、まさに『冬の祭典』の名に相応しい大作でした。
現在、こども達が物語に触れられる機会も多様化し、今や手元の小さな画面からでも、すぐに見たい
物を見られ、更にはAIや仮想空間など科学の進歩も騒がれている時代です。
 そんな時代に逆行しているような文化とも言える人形劇になぜこれほど心踊らされるのか。
セリフや段取を覚え、物言わぬ人形や景色を大勢の人の力で動かして一つの物語を見せていく人形
劇は、現代においては非常に面倒な見せ方であるとも言えるでしょう。
しかし、それがこんなにも心踊らされるものになるのは、やはり紙に書かれた絵や言葉、画面の向こう
の映像ではなく、手を延ばせば触れられる、同じ空間を共有する『目の前の出来事』だからこそなのだ
と感じられます。
 しかもそれを演じているのは、普段、自分たちと同じような生活を営んでいる人たち、身近な存在なの
だ。
 どれだけ時代が進んでも、自分と地続きの身近な存在として見せてくれる人形劇だからこそ、今の時
代においても特別な体験としてこども達を楽しませてくれるのだと思います。
 今年の冬の祭典も沢山の親子連れで盛況となっていました。
人は自分の体験を誰かに伝えたくなるものです。
今日、冬の祭典を観たこども達が大人になった時、そこに人形劇がある限り、今度は自分達のこどもを
連れてまた観に来てくれるでしょう。
 これから産まれてくるこども達にも、冬が待ち遠しくなるような物語を届けられますように。
そんな存在であり続けてほしいと願っております。